仕事用の電話

近年は携帯電話しか使っていないという人も多くなってきました。
通信料金のうち何割かを家事按分で経費に計上すれば十分という人も多いでしょう。
一方で信用上の安心材料として固定電話を引くという需要もあります。
携帯電話(スマートフォン)2台を使い分けている場合もあるかもしれません。
固定電話や2台目を使う目的が番号取得だけであれば、番号だけ増やすという選択肢もとれます。
また仕事と私用で番号を分ければ按分比率に悩む心配もありません。
ここでは物理的に電話機を増設せず回線を増やす方法をいくつか紹介します。
・バーチャルオフィス専用の電話番号
050などで始まるIP電話のこともあれば、03や045など物件所在地の番号のこともあります。
いずれにせよバーチャルオフィス宛の電話は個人の電話に転送されるのが一般的です。
電話秘書サービスとセットで自動的には転送してこないサービスもあります。
・スマートフォン向け03/045番号
市外局番が03または045の番号については、電話番号そのもののレンタルサービスもあります。
レンタル事業者と契約してスマートフォンの専用アプリで利用するというものです。
基本料金はかかりますが、利用頻度によっては1000円/月で済む場合もあります。
発信料金が03または045の固定電話からと同額になる点がユニークです。
・スマートフォンのIP電話アプリ
050で始まる番号でよければLaLa CallViberなどのアプリという選択肢もあります。
基本料金がかからず、通話料金も低めに設定されています。
ただしユニバーサルサービス料金(1回線あたり数円)はかかるようです。
上記いずれも、スマートフォンがデータ通信のみの契約でも電話として使える利点があります。
通信容量1GBでおよそ70時間の通話(発信・着信合計)ができるそうです。
ただし仕組みとして通常の固定電話とも携帯電話とも異なるため、音質はそれなりです。
無料のアプリで試してみて納得してから本格的に利用することをおすすめします。

合理的な仕事場(3)賃貸オフィスなど

仕事場専用として部屋を借りるなら、レンタルオフィスという選択肢もあります。
初めからデスクや回線が揃っているので、マンションなどを借りるより仕訳はシンプルです。
マンションなどを借りて仕事用の家具類を購入すると、その家具類を資産に計上することになります。
業種や職種によっては、デスクではなく応接室が必要な場合もあります。
カフェでは話しづらい内容の打ち合わせが多い人は会議室、ラウンジを借りてもよいでしょう。
物件によっては固定の月額料金がなく実費の都度払いができる会員制度もあります。
全国を飛び回る仕事で各地に拠点がほしい場合、一部バーチャルオフィスも考えられます。
サーブコープリージャスなどの大手では、契約した以外の都市にある施設も利用できます。
サービス内容そのものだけでなく契約期間の単位なども物件により異なり、万人向けの最適解はありません。
自分がオフィスに求める機能、オフィスを使う時間や頻度などを洗い出して検討しましょう。

合理的な仕事場(2)いわゆるノマド

パソコンとインターネットさえ使えれば「ほぼ」どこでもできる仕事の人も多いかと思います。
「ほぼ」と言うのは他にも個別の条件があるからにほかなりません。
他人の個人情報や機密情報を扱うので第三者の目にふれたくないときなどです。
ともあれ最低限の条件は落ち着いて作業できることと電源が取れることではないでしょうか。
都市部にはコワーキングスペースと呼ばれる仕事場の共有できる施設があります。
机、電源、インターネット接続が利用できますがデスクからカウンターまで形態はさまざまです。
利用料金は月額契約のこともあれば、ドロップイン(一時利用)ができるところもあります。
前者は当然「地代家賃」に計上できますが、後者も「雑費」に計上して差し支えありません。
私本人は「雑費」の下に「施設利用料」という補助科目を作って計上しています。
外出時に時間調整も兼ねて仕事をしておきたい場合などは一部の飲食店も選択肢に入ります。
ただし1人で作業をするために入った場合の飲食代は交際費には計上できません。
上記「施設利用料」に類する仕訳が通る場合もあるようですので、気になる方は税理士に聞いてみては。
打ち合わせなどではなくパソコン作業に使える飲食店を最寄り駅や住所などから探せるサービスもあります。
コワーキングスペースや空港ラウンジなどの情報も載っていて外出時に便利です。

合理的な仕事場(1)自宅での就業

フリーランスで自宅の一部を仕事場にしている人は多いかと思います。
仕事場で使っている/仕事場にかかっている費用は事業経費として計上しているでしょうか。
電気料金、プロバイダ料金、電話料金などです。
これに加えて賃貸住宅の場合は家賃と管理費、持ち家の場合は維持費用(注)が按分できます。
(注)持ち家の維持費用:固定資産税、住居の減価償却費、住宅ローン金利、火災保険料など
按分の方法としては、面積によるものと時間によるものがあります。
たとえば一室を仕事場として使っている場合、その部屋の面積を住居全体の面積で割ります。
水回りやリビング、寝室などは経費計上の対象から除外するためです。
ワンルームマンションなど除外が難しい場合は、業務時間を24で割るという方法もあります。
いずれもあまり極端な数字にするとあらぬ疑いを招きますのでご注意ください。
注意点として、住居の事業で使用する割合については住宅ローン控除を受けられません。
また、住宅ローン控除はそもそも居住用途の物件に対する控除です。
事業で使用する割合が50%を超えると控除制度の対象外となります。
反対に10%以下であれば住宅ローン控除を100%居住用として受けられます。
すでに住宅ローン控除を受けている場合は経費計上しないほうが得になるかもしれません。
また住居の減価償却費は取得の時期によって計算法が異なります
旧定額法定額法建物の耐用年数ともども国税庁のサイトで説明されています。

所得補償保険の肝

収入保障保険、所得補償保険といったものに興味のある方は多いかと思います。
自営業者に必要なのは後者の所得補償保険です。
前者は生命保険、後者は損害保険(働けないという損害を補填するもの)という違いがあります。
また、給与所得者を主な対象とする収入保障保険は給付まで時間がかかります。
給与所得者には社会保険制度による保護もあるからです。
では所得補償保険とはどういう保険商品でしょうか。
ケガや病気で仕事ができないときの稼ぎ(→生活費)を補う目的の商品です。
損害保険なので払い込み保険料が所得控除の対象にはなりませんが、給付金も非課税です。
損害を補填する保険ですから、実際の所得以下の金額までしかかけられません。
この場合の所得はおおむね前述した「年収A」の数字ですが、副収入のある場合は要注意です。
就業不能な状態でも入ってくる賃貸料や印税、ライセンス料などは補償金額に含められません。
もちろん預貯金の利息や株式の配当なども対象外です。
所得補償保険が給付される「就業不能状態」が具体的に何を指すかは契約により異なります。
例A.「医師の治療を受けていることにより、保険証券に記載の業務に就業できないとき」
例B.「いかなる職業においても全く就業ができないと医学的見地から判断される状態」
この2例の違いにお気づきでしょうか。
例Bでは他の職業ならば従事できると医学的に判断されたら保険金は給付されません。
ですので所得補償保険を検討するときには就業不能状態の定義をよく確認しましょう。

フリーでも利用できる福利厚生

福利厚生はそもそも労働者の待遇の一部なので自営業者にはあまり縁がありません。
会社や役所に勤めた経験のある人には懐かしい言葉ではないでしょうか。
このうち法定外福利はフリーランスでも利用できる場合があります。
具体的には旅行代金の優遇、スポーツクラブの法人契約による都度利用などです。
福利厚生サービス代行企業の法人名義で契約された各種優待が使えることになります。
主な代行企業にはベネフィット・ワン(証券コード:2412)、リロクラブなどが挙げられます。
両社に雇われることなくその福利厚生サービスを利用する方法は大きく分けて2つ。
株主優待と提携サービスの利用です。
リロクラブについては、親会社のリログループ(証券コード:8876)株主の優待です。
ベネフィット・ワンのサービス「ベネフィット・ステーション」には個人向けもありますが有料です。
リロクラブのサービス「クラブオフ」は「○○クラブオフ」という形で見聞きしていないでしょうか。
生命保険、自動車保険、変わったところでは会計ソフトの弥生なども提携しています。
自社サービスの継続ユーザーに対する見返りとしてクラブオフアライアンスに加盟しているわけです。
保険や会計システムといった固定支出となるサービスを見直すついでにいかがでしょうか。
特にジェフグルメカードの利用が多い人にはおすすめです。

支出による収入

マイナス金利政策が敷かれるほどですから、預貯金利息は収入として期待できません。
1年定期でもせいぜい年利0.220%です(カカクコム調べ)。
さらに20.315%(国税15.315%(復興所得税含む)、地方税5%)の税金がかかります。
1万円を1年預けて(引き出せない条件で)16円ももらえないということです。
一方でクレジットカードには一般にポイント制度があり、利用金額の一部が還元されます。
カードによっては還元率が数%に及ぶものもあります(カカクコム調べ)。
しかも現状こうしたポイントは課税されていません。
なお、カードの入会審査では年収として前述した「年収A」の数字を使いましょう。
フリーランスの場合クレジットカードの入会を断られることもあります。
無理に審査の甘さを謳う会社を探すよりも、デビットカードに目を向けてみましょう。
たいていの場合クレジットカードと同様に利用でき、即時決済で便利です。
デビットカードは単なる決済手段であり融資契約ではないのでほぼ確実に作れます。
発行元の金融機関によってはデビットカードでもポイント還元やキャッシュバックがあります。
年会費の有無など各社で違いがあるため、興味のある銀行名で調べてみてください。
話は少し逸れますが、デビットカードは海外旅行でも便利です。
カードブランド(ViSA、MASTERなど)に対応した任意のATMで出金できます。
空港などで現金を両替するより為替手数料が割安なのも魅力です。
また経費性の出費の場合、即時に日本円換算で引き落とされるため記帳の手間も省けます。
事業用支出をデビットカードにまとめると、仕訳が楽になるのもメリットと言えるでしょう。
現金を持ち歩く必要もなく、「現金」や「事業主貸」仕訳をする手間が省けます

生兵法より小規模企業共済

勤め人には無縁でフリーランスには重要な制度のひとつが小規模企業共済です。
文字どおりの小規模企業(従業員20人以下)だけでなく個人事業主も加入できます
生涯現役だから退職金積立の制度は不要という方も、一度は検討してみてください。
65歳以上になってから解約すると解約手当金が退職所得扱いになるからです。
退職所得は控除額が大きく分離課税です(=事業所得と合算されません)。
解約手当金には積み立てた原資だけでなく中小機構による運用の成果も含まれます。
・掛金は月額1000円~7万円までの範囲(500円刻み)で自由に選べ、途中で変更もできます。
・掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です(所得控除)。
・半年(6ヶ月)または1年(12ヶ月)分をまとめて前納することもできます(要手続)。
つまり、収支の余裕に合わせて手元の現金/預貯金と所得控除を選べるわけです。
例年になく売上が伸びてしまったときは最大84万円を前納して当年の所得を圧縮できます。
ただし前納は飽くまで翌年分の掛金なので、翌年の掛金は自動では引き落とされません。
所得控除を優先したいぐらいの余裕があれば前納をし続けることになります。
いざという時には契約者貸付制度もありますが、頼らないで済む程度の掛金にしておきましょう。
有利な預貯金商品や保険商品の少ない近年でも、小規模企業共済の運用は健闘しています。
もちろん年によって実績に変動はありますが、2011~2015年の平均利回り2.97%です。
詳しくは公式サイトでダウンロードできるPDFを参照してください。
万一のことがあったときでも、国の制度なので安全性は高いと言えます。
零細事業者の退職金積立という性質上、救済の優先度は高いはずだからです。
中小機構に直接ではなく委託先機関に出向いて加入申込をする必要があります。
たいていの都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合で扱っていますが上記リンク先を確認してみてください。

スマートフォンの通話料圧縮

いわゆる「格安SIM」の弱点として、携帯電話大手3社より通話料が割高になる場合があります。
大手が扱っている通話し放題プランは「格安SIM」サービスにはあまり普及していません。
日常的に発信通話の時間が長い、頻度が高い人なら大手の方が全体として割安になり得ます。
いっぽう、在宅家業で固定電話も使えるといった場合、通話し放題プランの必要がありません。
私の場合、携帯電話(スマートフォン)はほぼ着信専用です。
スマートフォンから発信する通話料は毎月100円ほどしかかかっていません。
普段はスマートフォンから発信することがほぼない人でも、旅先では得てして頻度が上がります。
海外旅行が趣味の友人は、旅先から家族への連絡だけで1万円を超えたこともあるそうです。
事情を聞いてみると、国際ローミングを使ったせいでした。
スマートフォンにSIMロックがかかっているため現地SIMが使えなかったのです。
また海外では電話の受信にも通話料がかかります。
こうした一時的な出費対策に「LINE Out」を提案したところ、かなり驚かれました。
モバイルルーターを利用すればデータ通信に国際ローミングを使う必要はなくなります。
データ通信が使えればLINE Outも使えるので、国際ローミングを経由せず通話できます。
もちろん国内では特にモバイルルーターを使う必要もありません。
海外での節約に応用する場合、発信専用のサービスである点に注意が必要です。
国際ローミング着信をすぐ切って折り返すのが気になる人はこの手法をやめておきましょう。
通話音質と安定性の保証はないようですが、こだわりがなければ有力な選択肢だと思います。
利用条件については「LINE Out」公式サイトをご参照ください。

スマートフォンを「格安SIM」にすると

近年、「格安SIM」や「MVNO」と呼ばれるサービスが普及してきました。
こうしたサービスの詳細はともかく、興味の焦点は結局いくら安くなるのかだと思います。
具体的な金額は場合によって異なるので、ここでは一例を見てみましょう。
・端末: iPhone 5 16GB→ iPhone 6s 16GB
・通信容量: 3GB
・通信事業者: au → mineo (Dプラン・デュアルタイプ)
・備考1: auの契約は13年目、「誰でも割」(いわゆる2年縛り)2018年4月まで
・備考2: SIMフリーのiPhone 6sはAppleの定価で購入
この条件で2年間の累計金額(端末代金、通信料、諸手数料を含む)は図のとおりになります。
fig02.png
諸手数料にはMNP転出手数料、解約料、新規契約の事務手数料を含みます。
通常auの解約料は10000円ですが、契約期間が10年を超える場合3000円となります。
auの料金プランは「スーパーカケホ」と「データ定額3GB」で試算しています。
赤の「契約継続」はauで機種変更し、2年間そのまま使い続けた場合です。
緑の「SIMロック解除」はauで機種変更し、180日後にmineoへ転出した場合です。
黄の「解約料0」はauで機種変更し、解約料が0の月まで使い続けた場合です。
青の「SIMフリー」は即時SIMフリー端末を購入しmineoへ転出した場合です。
この例ではauで使える割引をすべて適用しているため、端末代金は445円/月です。
解約時には分割払いの残額を清算するため一時的に出費が大きくなります。
たとえば緑の場合、7か月目に42110円を返済するため単月の出費が52620円になっています。
一度に端末資金を用意できるのであれば、SIMフリー端末を早く買って転出するのがお得です。
auのポイント残高が多い場合は機種変更して半年後に転出するほうが得な場合もあります。
いずれにせよ、単純比較した場合、解約金にこだわるのはあまり得策ではありません
ただしau、docomo、Softbankで使えるサービスには他社では使えないものもあります。
各社独自アプリなど、転出を検討する際には改めて確認してみてください。
また、10GB/月を超える通信容量を使いたい場合は転出しないほうが無難です。
どうするのが得になるのかは状況により異なりますので、本項は参考にとどめてください。