払うか貸すか

経費の計上や共済、確定拠出年金の加入による節税効果は侮れません。
まずは所得税が減り、追って住民税と国民健康保険税が減ります。
そして共済や年金の加入による減税効果は将来の受給時にも出ます。
投資による一時所得や配当所得とは別枠で控除があるからです。

とは言え手元の現預金から別勘定に移したお金は使えません。
たとえば小規模共済を月額1万円として、年間12万円。
12万円が加入期間中は使えないお金になります。
※解約(脱退)すれば使えるようにはなりますが。

一方で小規模共済に積み立てたお金は多少なりとも増えます。
運用を国(中小企業庁)に任せた投資の側面もあるのです。
手元(現金や普通預金)に置いていてそうはいきません。
増分は預金利息ですが、分離課税で目減りしてしまいます。

税金は納める(払う)もの、共済掛金は預ける(貸す)ものです。
共済掛金は共済給付金として返ってくる約束になっています。
今のところ年金制度のような不祥事も起きていません。
信用しがたいとしても、払うより貸すほうが奪還の余地はあります。

 

 

時間が仕事をするということ

資産運用 EXPOに行ってきました。
「ライフプラン」と「資産運用」の概論からFXやCFDの各論までセミナーを聴講した結論として、フリーには確定拠出年金がおすすめできると考えています。

・毎月(または毎年)拠出が確定している
確定拠出年金について以前の記事では余裕資金でと案内していましたが、考えを改めたほうがよいようです。
収入-支出-予備費≒余裕資金(=投資に回せる)
ではなく、
収入-投資資金-予備費=支出に回せる(→適宜やりくりする)
と考えたほうが資産は増やしやすくなります。
ここで投資資金をいくら、どのくらい確保するかは目的によります。
目的がいわゆる老後資金であれば、確定拠出年金がぴったりだということです。
数年後の資金需要を見込んでいる場合は「つみたてNISA」や積立型の投資信託という選択肢もあります。
また、やりくりは変動費(教養、娯楽費など)の節約より固定費(住居費、車の維持管理費、光熱費、通信費、保険など)の削減のほうが効果的です。
「変動費を削ると生活の質が下がる」という話もありました。

・長期運用による複利効果
60歳以降の予め決めた年齢まで引き出せないということは、その枠内で何度も再投資されるということです。
ローリスク・ローリターンの運用商品でも時間をかけた効果は軽視できません。

・節税になる(→固定の支出が減る)
拠出期間中は拠出の全額が所得金額から控除されます。
運用益は非課税です。
給付時は一括であれば退職所得控除、分割であれば公的年金等所得控除の対象となります。

どの性質もこうして並べてみると目新しいものではありませんが、だからこそ見落としがちだとも言えます。
むしろ(あまり)意識せずに本来の意味での余裕資金を作れるのではないでしょうか。

第27回JTF翻訳祭に参加しました

11/29に開催された第27回JTF翻訳祭に参加しました。
「フリーランスだから考えたいお金のこと」
ライフプランニングについてと利用しうる制度の概要。
このブログの一部抜粋に近い内容です。
朝9時半からだったこともあり、聞きそびれたという声も頂戴しました。

本業が個人翻訳者ということで参加した翻訳祭。
同業に共通しそうな話題を選んだものの、やや漠然としていました。
というのは皆さんのライフステージにばらつきがあったからです。
ライフステージは将来計画の重要な基礎、かつ個々人で異なります。
独立前の方から現役の長い方まで、翻訳者としての位置も違いました。

ヒントが得られた、確認になったという声も頂戴しました。
しかし隔靴掻痒の思いで去られた方もいらっしゃるかと思います。
「一般論は結構、自身がどうするべきなのか見えなかった」
そうしたご不満であれば、まさにFPを活用していただきたいのです。
お金のことを「考えたい」としたのはそこが狙いでした。
FP協会の開催するイベントで質問してもよいでしょう。
もちろん、私宛に個別のご相談をいただければ歓迎します。
仲間内で集まる各地の勉強会に呼んでくださってもかまいません。
お問い合わせはメールでもついったーのDMでも受け付けます。
またはこちらのお問い合わせフォームをご利用ください。

 

今だから定期預金

いわゆるマイナス金利政策などの影響で、蓄財や運用はしにくくなってきました。
学資保険や養老保険といった貯蓄用保険も商品数・利幅ともにかなり縮小されています。
とは言え個々人にとっての貯蓄の必要性がなくなったわけではありません。
また、「見えている」お金は使ってしまいやすいという側面もあります。
そこで今あえて定期預金を検討してみてはいかがでしょうか。
地方銀行や信用金庫などでは宝くじ付き、マイル付きといったものもあります。
ちなみに宝くじの当選金は非課税です。
ネット専業銀行では都市銀行より利率が高いところもあります。
金利以外のメリットもあります。
《普通預金とは別口座になる》
 決済や入出金でお金の出入りが見えるのは普通預金口座です。
 定期預金に移すと、その分は別口座になるためすぐには「見えなく」なります。
 当座の生活資金だけ「見える」ほうが節約意識は身につきやすくなります。
 貯蓄の習慣づけには積立型のほうがよいかもしれません。
《いざという時はすぐ解約できる》
 株式や投資信託などと違い、現金(普通預金)化に時間がかかりません。
 また解約しても利息が付かない程度のペナルティで済みます。
 いざとなったら解約して普通預金に戻せばいいのです。
本文はブログという媒体の性質上、一般的な制度の紹介にとどめております。
具体的な情報についてはコメント欄またはこちらからお問い合わせください。

国民健康保険も組合に加入できれば安く?

国民健康保険には市町村で扱うもののほか国民健康保険組合という制度もあります。
一般に組合のほうが市町村より割安ですが、加入するには条件があります。
フリーランスでも加入できる主な国保組合は以下の3つです。
・文芸美術国民健康保険組合
職種:文芸、デザイン、イラスト、写真、書道など
その他の条件:特定の団体に加入していること
・京都芸術家国民健康保険組合
職種:工芸、音楽(ピアノ講師を含む)、ウェブデザイン、翻訳(芸術に関するもの)など
その他の条件:京都を初めとする特定の市町村に住民票があること、フリーで加入の場合は「京都芸術家協会」に加入すること
・大阪文化芸能国民健康保険組合
職種:タレント、音楽家(ピアノ講師を含む)、各種商業デザイン、写真、ライター、翻訳、将棋、囲碁、茶道、華道など
その他の条件:大阪を初めとする特定の市町村(関東でも東京、横浜など一部地域は対象)に住民票があること、組合員の紹介があること
他に理美容や個人飲食店でも都道府県によっては国保組合があります。
住所地に制約条件のない人は関西圏での生活を検討する価値があるかもしれませんね。

ご相談はメールでもどうぞ

漠然とした悩みに対しては、まず問題の切り分けが重要です。
家計を含めたやりくり、保険、年金(老後資金)、利用できる制度など、何となく気になる方。
方向性を確認する程度のご相談でもかまいません。
内容によっては収支などの数字をお尋ねしなくともお答えできる場合があります。
相談するため足を運ぶことに時間を割きにくい方、抵抗のある方。
メールでのご相談にも対応しております。
料金は対面と同額の4000円です。
こちらのお問い合わせフォームをご利用ください。

市販薬の一部も所得控除の対象に

セルフメディケーション税制という特例制度をご存じでしょうか。
2017年からの5年間だけ適用される医療費控除の特例です。
スイッチOTC医薬品に分類される薬を購入した場合にも所得控除があります。
該当する薬の年間合計購入金額が1万2千円を超える場合、8万8千円までが控除の対象です。
つまりこの特例での控除額は最大7万6千円です。
対象となる薬品の一覧は厚労省のページからPDFファイルをダウンロードできます。
注意点として、通常の医療費控除と併用できません

青色申告は大前提

ついフリーランスたるもの青色申告をしているという前提でこれまでの記事を書いてしまいました。
もしまだ青色申告をしていないという人は、来年からでもすぐ青色申告に切り替えましょう。
(制度上、適用する年の3月15日までに届け出る必要があります)
青色申告特別控除として65万円が所得から控除されます。
不動産所得、事業所得、山林所得のどれかがあれば青色申告ができます。
給与所得や雑所得など他の所得があってもかまいません。
青色申告に切り替えるには申請の手続きが必要です。
所得税の青色申告承認申請書に必要事項を記入し、税務署に提出します。
提出先の税務署は住所または所在地によって決まっています。
青色申告の場合、確定申告書と同時に青色申告決算書を提出する必要があります。
複式簿記の知識があれば国税庁の確定申告書作成コーナーで作成できます。
知識がなくとも青色申告に対応した会計ソフトを用意すれば問題ありません。
領収書などの収支情報を入力していけば自動で決算書が作成できます。
会計ソフトに年間1万円かかったとしても、控除額は65万円です。
もちろん会計ソフトにかかる費用は消耗品費として費用に計上できます。

いつまでできる仕事か

フリーランス事業者は雇用契約などの定めがないため定年というものもありません。
よほど体力を使う仕事でもない限り生涯現役も可能です。
だからといって年金や「退職金」が不要かというと、一概にそうとも言い切れません。
今している仕事がなくなったとき、人事異動のような受け皿も通常ないためです。
職場や特定の取引先ではなく職種や市場がなくなる可能性を考えたことはあるでしょうか。
(私がしている翻訳業はAIの発達で早晩なくなるとよく言われています)
受け皿も自分で用意することになりますが、たとえば次のような選択肢が考えられます。
・別の仕事を見つける
・新規市場を開拓する
・今のうちに稼いでおく
・手持ち資金を運用する
どれも言うは易く行うは難し、皆さん「今のうちに~」を選ぶのではないでしょうか。
とは言え個人でこなせる仕事の量にも限界はあります。
年齢や能力によって具体的手段は異なりますが、年金や「退職金」は安心材料となるはずです。
概ね40代までなら個人年金保険小規模企業共済確定拠出年金を検討しましょう。
それ以上の方にはNISAを活用した投資信託での運用をおすすめします。
また何年後か決まったタイミングでまとまった資金が必要となる予定がある場合にも有用です。
本文はブログという媒体の性質上、一般的な制度の紹介にとどめております。
具体的な情報についてはコメント欄またはこちらからお問い合わせください。
コメント欄からお問い合わせいただいても公開されることはありません。

老後や介護の心配の前に

日本FP協会神奈川支部のセミナーを受けてきました。
テーマは「高齢化社会の現状認識とFPとしての対応」
前半はNHKスペシャル老後破産から高齢者の自己破産や貧困について事例の紹介がありました。
後半は介護保険制度の現状と介護予防に関する民間サービスの説明でした。
特に後半では「FPとしての対応」を謳っており課題が提示されたのですが、答えは出ていません。
介護は予防が大事、予防/支援サービスの啓蒙をということですが、もちろんお金がかかります。
今そのお金が出せる人、家庭なら間に合う目もあり紹介する価値も大いにあります。
しかし介護にかかる費用を生涯設計として若いうちから引き当てている人がどれほどいるでしょうか。
なければ今の生活を切り詰めてそちらに回すことになります。
言わば広義の保険のために、今からいくら回せるでしょうか。
要介護状態にはなるかもしれませんし、ならないかもしれません。
なる確率を下げるための「投資」は、何歳から何年なら可能でしょうか。
また、セミナーで紹介された高齢者の貧困の事例に厚生年金受給者は出てきませんでした。
国民年金しか加入しておらず配偶者が亡くなって収入半減に直面したケースと未納による無年金のケースです。
後者は現役当時に納付する余裕がなかったとの紹介でしたが、廃業時の預貯金はあったようです。
預貯金の切り崩しを続けているうち限界が見えてきたという話でした。
その人を非難する意図ではありませんが、年金保険料は納付しましょう。やはり保険です。
給付額が下がる見込みだとは言え、残高が減る一方の将来よりは幾分ましでしょう。
とは言え月額5~6万相応の「収入」で暮らすには他の貯蓄も相応に必要です。
もちろん自営業者は廃業しなければ定年はないので生涯現役という選択肢もあります。
ただ、生涯現役もただではありません。続行できるだけの健康管理が肝要です。
高齢者にかかる医療費の3割は防げたはずの生活習慣病に関わるものだそうです。
防げるはずでありながら、一度かかるとまず完治はしません。
こうした病気に備えた医療保険もいいですが、まずは動けるうちに動く習慣をつけておくこと。
陳腐な結論になってしまいますが、一番の備えは日常生活なのだと痛感しました。